64 「こころの健康を守り推進する基本法(仮称)」の法制化を求める意見書提出に関する陳情
平成23年12月7日
【陳情の趣旨】
足立区議会で、「こころの健康を守り推進する基本法(仮称)」の制定を促す意見書を、国会及び関係行政庁に提出してくださるよう、陳情いたします。
【理 由】
今、国民の「こころ」は深刻な状況にあります。平成10年から毎年3万人以上の人々が、自殺によって命をなくしています。平成17年には300万人以上の人々が精神科を受診するようになり、今も増加傾向が続いています。
足立区でも自立支援医療(精神通院医療)の認定数は平成18年度8,690人、平成21年度8,961人、精神障害者保健福祉手帳の交付数は平成18年度1,287人、平成21年度1,898人と大きく増加しております。
WHO(世界保健機関)の個人と社会が被る損失を計算した健康・生活被害指標(DALY指標)では、日本をはじめとした先進各国では精神疾患が、がんや循環器疾病に比べても、最も高い政策的重要度にある疾患であることが、明らかにされています。
平成23年7月6日、厚生労働省は「4大疾病」と位置付けて重点的に対策に取り組んできた「がん、脳卒中、心臓病、糖尿病」に、精神疾患を加えて、「5大疾病」とする方針を決めました。糖尿病237万人、がん152万人に対して精神疾患は323万人に上ります。重点対策が不可欠と判断されました。
精神疾患に関しては、他の障がい分野に比べ、人権・医療・福祉ともにハンディがあります。精神疾患の症状による社会生活の困難さは、外からは見えにくく、本人の生きづらさが理解され難いことなどから、他の障がいとは大きく異なっております。
福祉分野においては、平成18年4月から3障がいを一緒に支援する法律が作られましたが、サービスの基盤体制は遅れています。
また、医療においても、他の科とは大きな違いがあります。精神科以外の入院病棟は、患者16人:医師1人以上です。精神科病棟では患者48人:医師1人になっています。患者:看護師は他科の3:1ではなく、2005年までは半分の6:1が最低基準でした。2006年以降は4:1になりましたが、当面5:1で看護補助者も含んでよいことになっています。このように一般の医療水準より低く設定されており、慢性的な人手不足です。
地域で暮らす患者を支える家族に対しても支援が必要であることが最近になってようやく認識されるようになりました。英国では1997年から医療改革自殺予防に取り組み、10年間で15.2%減少という成果を上げています。統合失調症の治療としては、偽薬だけの場合の70%、薬物だけの38%、薬物と患者への心理教育の36%に比較して、その人に適した薬物療法と家族心理教育を合わせて実施すると再発率を13%に低減させることが出来ることを実証しました。長期の精神障がいを持つ人の家族が精神健康上の困難を持つ率は、一般の人々の3倍であることも分かっています。家族への精神疾患・治療についての情報提供・実際的、情緒的な支援が必要なのですが、日本ではこの部分も皆無に近く、ようやく家族教室などが開かれ始めました。
厚生労働省は平成20年度から21年度にかけて「今後の精神保健医療福祉のあり方などに関する検討会」を設け、現状を網羅的に明らかにし、今後の望まれる施策を報告しました。この報告を基に、平成22年4月から家族・当事者27名、医療・福祉の専門家及び学識経験者63名が集まり、「こころの健康政策構想会議」を設立しました。
この会議では、家族・当事者のニーズに応えることを主軸に据えて、63回の会議を重ね、現実の危機を早く根本的に改革する提言をまとめました。22年5月末に厚生労働大臣に「こころの健康政策についての提言書」を提出しました。
この中で
@精神医療改革
A精神保健改革
B家族支援
を軸として、国民全てを対象とした、こころの健康についての総合的、長期的な政策を保障する「こころの健康を守り推進する基本法(仮称)」の制定を強く求めています。この提言に賛同する個人や団体は、広く国民から署名を集め、国会への請願の準備も進めております。
私たち精神障がい者の家族会としては、この基本法の制定を一刻も早くと望んでおります。足立区議会におかれましても、「こころの健康を守り推進する基本法(仮称)」制定を促す意見書を、国会及び関係行政庁に提出くださるよう、心よりお願い申し上げます。