7 「工場運営企業と周辺住民の共生のための条例」の制定を求める陳情
令和8年6月9日
【陳情の趣旨】
私たちは、足立区新田二丁目の住民です。
居住地域における公害問題の経験から、現在の公害規制行政には欠けている点があると思いました。これをより良いものに変えていくために、「工場運営企業と周辺住民の共生のための条例」を制定していただきたいと思います。
この条例は、公害を発生させた企業に対して、住民への説明会・住民との話し合い・住民との間の協定締結を促すことを主な内容とするものです。その目的は、公害の規制が「住民・企業・自治体という三者のパートナーシップ」を形成する中で行われていくようにすることです。
【陳情の理由】
なぜ、そのような条例が必要であると考えたか、事実経過を簡単に説明します。
2022年に、ある食肉加工の会社が本社・工場を新田二丁目に移転する計画を示してきました。2023年に建築工事が始まりましたが、その年の秋に大きな問題が生じました。土壌に含まれた水の大量流出によって液状化と同様の現象がおこり、近隣の家屋5棟が傾くという被害が発生したのです。私たちは会社側に対策についての話し合いを求めましたが、この食肉会社は民法の条項をたてにとって話し合いに応じず、謝罪もしませんでした。(建設会社は応じました。)
その後、2024年11月に工場の操業が始まってからも、大きな問題が起こりました。肉を加工した後の汚水や廃棄物の処理過程で生じる悪臭の周辺環境への流出です。臭気の程度は日によって異なりましたが、ある時は順天高校の体育の授業中に臭気がひどくなり、授業中止の処置がとられたほどでした。工場の近くに住む私たちの毎日の生活にも支障が生じました。私たちは、区の担当課に繰り返し通報するとともに、会社側に説明会の開催と話し合いを要求しましたが、会社側は要求に応じませんでした。私たちは、新田地域内での署名運動に取り組み、集まった署名を手渡ししながら、話し合いを要求しましたが、それでも応じませんでした。区の担当課は、臭気の測定に取り組んでくれたり、私たちの要求を取り次いだりしてくれましたが、1年3か月の間、何の効果もありませんでした。区の担当課によれば、測定の結果が基準値を超えない限り、手の打ちようがないとのことでした。今年の2月になって、ようやく基準値を超える数値が出て、区の担当課が会社側に注意を促しました。そのため、会社側はある程度、軽減のための措置をとったようですが、臭気の問題はまだ解決されていません。また、工場の操業にともなう騒音の問題も解決されていません。
現在の公害規制行政は主として企業に対して法令の定める「基準値」を守らせるという形で行われているため、現実的には以下のような欠点をともなうものとなっています。
根本的な欠点は、問題の企業も公害を規制する行政も、測定値が「基準値」を上回るか否か、それだけを意識するようになってしまうということです。特に、良心的ではない企業であれば、その傾向は強まり、基準値を上回る数値が出なければ、住民からの苦情の声は無視し続けるという態度をとるようになります。そうした企業は、つねに「数値」だけを見続け、住民の顔は見ない、声は聞かないという態度をとります。
さらに、発生した迷惑な事態の改善にとても長く時間がかかるという欠点も派生します。私たちは1年3ヶ月もひたすら待たされました。
さらにまた、改善方法は企業が住民の声は聞かず一方的に選ぶことになるので、対話によってより良い解決法を見つけ出すという道が閉ざされます。これも私たちが体験したことでした。
加えて、基準値を超えた場合に区の側が企業に勧める改善要請も、ただ基準値を下回る程度に引き下げてね、という内容にとどまり、過去のいくつかの成功事例が示すような積極的な解決策を促すものにはなりにくいという欠点があります。
こうした欠陥を是正し、これまでの基準値行政に欠けたところを補うような、新たな公害規制行政が求められていると考えます。
では、どのような公害規制行政に変えていくべきなのでしょうか。私たちは、2012年に環境省が作成し、全国の自治体に配られた文書「新しい地域パートナーシップによる公害防止取組指針」にその答えが示されていると思いました。この文書では、「本指針は、公害規制行政の従来の体制に加えて、事業者・地域住民・自治体の三者が情報共有とコミュニケーションを通じて信頼関係を築き、その相互信頼に基づいた三者の協力関係によって、公害のないよりよい環境を目ざした地域づくりのための取組が行われることを目標としている」と述べられています。
何よりも「三者の協力関係」が望まれるわけですが、それを実現するためには、どうしたらいいのでしょうか。私たちの体験でもわかるように、区内の会社の中には周辺住民との関係を重んじない会社もあります。こうした現状を鑑みれば、それらの会社の態度を変えさせるために役立つ根拠となる何らかの法的規範が必要だと思います。逆にそうした規範が何も存在しない限り、悪質な会社によって周辺住民が苦しめられる事態はいつまでも発生し続けると思われます。
基準値を守らせるだけの公害規制行政から、新たな地域パートナーシップも加えた公害規制行政に変えていくために、下記の条項を主な内容とする「共生のための条例」を早期に制定してください。このことは、工場周辺の住民たちの生活環境を守っていくために、どうしても必要です。
【共生のための条例に含まれるべき主な内容】
1.工場による公害が発生した場合、事業者は地域住民に対して説明会を開くこと。
2.事業者は、発生後の事態改善のために地域住民と話し合いの場を持つこと。
3.問題が続く間は、事業者と住民は定期的な懇談会を開き、良好なコミュニケーションの維持を図ること。
4.事業者と地域住民は、良好な状態と関係を維持しつつ工場の操業がなされていくための協定を結ぶことが望ましい。
最後にお願いしたいのは、現実に発生して現在も解決されていない公害問題に関わる条例なので、早期に審議し、決定していただきたいということです。それによって、私たちが忍耐しなければならない日々も短縮されていくことになりますから。
【下記添付資料省略】
(添付資料1)足立区工場運営企業と周辺住民の共生のための条例(案)