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教育基本法の改正に反対し、同趣旨の意見書の提出を求める陳情

15-14 教育基本法の改正に反対し、同趣旨の意見書の提出を求める陳情

受理番号
15-14
受理年月日
平成15年6月4日
付託委員会
文教委員会
委員会付託日
平成15年6月17日
議決年月日
平成16年6月23日
議決結果
不採択
起立多数
紹介議員

内容

 教育基本法の改正に反対し、同趣旨の意見書の提出を求める陳情

 中央教育審議会は二〇〇三年三月二〇日、「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」(答申)を遠山敦子文部科学大臣に提出しました。私たちは、今なぜ教育基本法を変えなければならないのか、よくわかりません。むしろ、教育基本法に則った教育が行われなかったことが問題だったのではないでしょうか。
 教育基本法の前文は、「われらは、先に、日本国憲法を確定し民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性豊かな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する」とうたっています。まず個人の尊厳があって、その結果として世界と人類の福祉に貢献するとしています。そして、第一条において、教育の目的を「人格の完成」とし、第三条において「教育の機会均等」を定め、第十条において、そのための条件整備を教育行政に求めています。
 一九四七年に制定された教育基本法は戦前の「忠君愛国」の教育を反省して、国民のための教育をめざして制定された法律です。その中心は、「人格の完成をめざし」「平和的な国家及び社会の形成者」を育てる教育を目的にしたことです。当時の文部省は、「人格の完成」とは、人間としてのあらゆる能力をできるかぎり発展させることだと説明しています。つまり、子どもたちは教育を受けることによって、学力や技術、体力、情操を身につけ、人間らしくなるということです。しかも一部の人々だけでなく、だれもがその権利をもっているとしたのです。
 教育基本法が定められて二年後、その具体化のために文部省から出された「新制中学校・新制高等学校 望ましい運営の指針」には、学校が地域にねざして運営されることを強調しています。いま、この考え方を生かし、全国各地でそんな学校づくりがすすめられています。「エリート」だけ集めるような学校ではなく、教職員が子どもたちの実態を話し合い「基礎学力こそ教育の基本」で一致し、教育計画を父母とともにつくりあげる学校づくり。地域の人々に戦争体験を聞いて「いのちの尊さ」を学び、仲間を大切にする気持ちを育てる授業。子どもたちの「わかりたい」「もっと人間として大切にしてはしい」という願いを生かすとりくみなどです。このように、教育基本法の「個人の尊厳」にもとづくとりくみは、子どもを生き生きとさせています。
 教育基本法のもとで僻地教育は充実し、奨学金制度も整い、地域的、経済的な教育的差別を撤廃して、誰でも等しく教育を受けられるようになりました。さらに、一九六三年までは一学級にあたり生徒数は「五〇人」でしたが、国民の運動によって一九八一年には現行の「四〇人」となり、昨年からは二〇をこえる県で三〇人学級などが実現してきました。また、私学助成も史上最高額までに発展しました。
 一九七九年には養護学校の小・中学部への就学が義務化され、九年間の義務教育制度が完成しました。続いて、すべての障害児に「権利としての教育を」の運動がひろがり、高等部、訪問教育、医療的ケアを必要とする子の教育が制度化されました。教育基本法第三条の「…能力に応じた教育…」が力となって、こうした障害児の学習する権利を前進させてきました。
 このように、教育基本法は、古くなったから変えなくてはならないどころか、世界人権宣言や、世界で二〇〇か国が参加する子どもの権利条約など、国際的な教育の流れにもつながる優れた法律なのです。戦後、さまざまな問題を抱えながらも、国民・教育行政は、教育基本法の理念を実現するために不断の努力を積み重ねてきました。
 ところが、文部科学省は、教育基本法の趣旨をふまえた施策をすすめるのではなく、友だちとの共同・協力を取り上げ、逆に友だちと競争をする教育を進めてきました。「習熟度別学習」という能力別学習を導入して「優秀な子」「そうでない子」の選別をすすめ、小・中学校から高校にいたるまで通学区を撤廃し、民間の株式会社が高校をつくることまで認めました。これでは、今ですら激しい受験戦争がさらにひどくなります。学校の中だけの競争にとどまらないで学校どうしが競争し、まるで商品をつくる企業が生き残りをかけて争うようなことになり、人間を育てる教育にはなりません。
 三月二〇日の中央教育審議会の答申には、「心豊かでたくましい日本人の育成」ということが二十一世紀をめざす教育として提示されました。この答申にそって教育基本法が改定され、それによる教育が実施されれば、一部のエリートづくりのための教育制度となり、今よりもっと差別的な、しかも「できる子」を選別する教育の体系になるでしょう。子どもたちは生まれたとたんに競争の社会に放り出され、それに勝ち抜くことを強くもとめられます。一方で国を愛することを強要され、国家に尽くす精神を涵養されます。さらに、家庭教育へさえも国家が介入してきます。これは個人の尊厳を否定することにつながります。
 教育基本法は、戦前の軍国主義・国家主義の教育への反省から制定されたものであり、答申のような国家に奉仕するための教育は戦前への回帰といわざるをえません。また、「国を愛する心」は一人ひとりの見識や、社会での自主的な判断に委ねるものであり、法律で上から押しつけるやり方は、時代錯誤といえます。
 今、必要なことは、教育基本法が掲げている理念を実現するために、学校現場や子どもをとりまく実態を検証し、教育環境を整えることです。不登校を克服できる学校づくり、学級崩壊の解決など、子どもたちを育てる立場から人格の完成に向けた施策を、教育基本法第十条に則り具体的に講じることではないでしょうか。
 以上の理由から、私たちは教育基本法の改正に反対します。つきましては貴議会が教育基本法の改正に反対する国への意見書を提出されることをお願いします。

会議録

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