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性同一性障害を抱える人々が、普通にくらせる社会を実現することを求める陳情(1項、6項、8項、11項、12項)

15-16 性同一性障害を抱える人々が、普通にくらせる社会を実現することを求める陳情(1項、6項、8項、11項、12項)

受理番号
15-16
受理年月日
平成15年9月1日
付託委員会
総務委員会
委員会付託日
平成15年9月25日
議決年月日
平成16年10月22日
議決結果
不採択
起立多数
紹介議員

内容

 性同一性障害を抱える人々が、普通にくらせる社会を実現することを求める陳情(1項、6項、8項、11項、12項)

 足立区議会議員の皆様におかれましては、日頃より市民生活の向上の為にご尽力頂き、心より感謝申し上げます。
 さてこのたび、標記に関しまして、早急に必要な法の制定と社会環境の整備を求めたく、陳情致します。
 私は、性同一性障害の当事者、及び半陰陽で且つ性同一性障害を有する当事者(以下性同一性障害を抱える人々と記します)の支援者です。
 性同一性障害とは、性自認(所謂心の性)と身体としての性(所謂体の性)が一致せず、そのくい違いに苦しむ状態を言います。一方、身体として、性染色体や性腺、内外生殖器等が典型的な男女の性別に分けられない半陰陽の当事者におきましても、その当事者に体現している身体の性的特徴と性自認が必ずしも一致せず、性同一性障害の当時者として長年に渡り苦しむ状態が少なからず存在します。
 国内において性同一性障害を抱える人々の数は、およそ7,000人と推定されておりますが、性同一性障害の診断を受けていない人々や、苦しんでいながら表面的にはオープンにできない人々の数も合せ推測しますと、その数は10倍以上になると言われております。
 一般に、人の体を生物学的に見た場合、受精直後の胎児は性的に未分化の状態で、男女のいずれにもなれる状態ですが、8週目から不可逆的な性分化が始まり、およそ20週目ころには身体的性差のみならず、脳の性差も生じると言われております。この不可逆的な性分化が始まると、性腺や内外生殖器等の他あらゆる身体的なものが性分化に従って変化し、脳も性差が形成され、男性あるいは女性としての特徴を示すようになると言われております。
 この胎児期の不可逆的な性分化の過程の中で、遺伝的因子を含め何らかの要因が、身体としての性に影響を与えると、性腺や内外生殖器等が典型的な男女の性別に分けられない半陰陽の状態を生じたり、心の性に影響を与えると、性自認と身体としての性が一致せず、苦しむ状態が生じたりすることになると言われております。生物学的要因としましては、身体の発達と性ホルモン等のバランスが崩れるために起こると言われております。
 その為当事者は、医学的、及び心理的、社会的、家族的、経済的な様々な問題を抱えております。
 特に、戸籍の性別と社会生活上の性別が異なることにより、就職する時や、家を借りる時、医療機関を利用する時等、非常な困難を伴います。
 例えば、性別が記載されている住民票や印鑑証明書を提出できずに、アルバイトでしか就労できなかったり、心の性と違う性別でやむなく家を借りて支障をきたしたり、また、性別が記載された健康保険証を用いたくない為に医者にかかれず、命を落とす人がいたりするようなケースもあります。
 公的機関におきましても、本人であることを疑われて、本人確認に時間を要したり、事情を説明したりと、不快な対応を受けることもしばしばあります。こうしたことにより、国民の権利である選挙権さえ行使し難い状況にあります。
 2000年12月に制定された「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」、及び関連の答申「人権救済の在り方について」や「人権教育・啓発に関する基本計画」では、性同一性障害を抱える人々の差別を解消し、人権の擁護に資することをうたっているにも係らず、多くの当事者の不自由さは何ら変っていないのが実情です。
 また2003年7月に「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が成立致しましたが、幼少の頃から性同一性障害を抱えて生きてきた何十年という歳月や当該当事者が戸籍の変更を許可されるまでの何年もの間、全ての性同一性障害を抱える人々は、いまだに不自由さを抱えながら生活して行かねばならない現実と直面しております。そしてこの特別法では、「20歳以上である事」「現に婚姻していないこと」「現に子がいないこと」「生殖腺が永久に機能しないこと」「他の性別に近似する外見」の五つの要件が設けられ当事者の多くは、戸籍の性別変更が出来ないのが実情です。特にこの要件のなかで、家族の理解を得て家族と共に幸せに暮らす当事者達にとっては、「現に婚姻していないこと」の要件を満たすためには、離婚をしなくてはいけないということとなり、理解ある配偶者との婚姻関係を破棄することを強制されていることになります。それは、幸せな一つの家庭を壊すことを法で定めたということになるのではないでしょうか。そして、特に「現に子がいないこと」という要件は、子がいるという事実は、もう過去のものであり現時点では、どうすることも出来ないことなのでありますし、子供達が親である当事者を理解し心の性として母・父と認めている場合戸籍上の性別の変更を認めないこと自体その子供達の将来にも悪影響を及ぼすことにつながるのです。実際、私は、子供達から「お母さん」と呼ばれ、母として子供達との生活を維持しております。周りの方々も皆、私達親子を、母と子として認めてくださっております。にもかかわらず机の上だけで物事を考え、父が突然母となるのは、子を不幸にすると考えられるのは、かえって私達の親子のような家庭を築き上げた当事者とその家族の場合、まるで当てはまらない考え方となるのです。そして、その考え方により、私達のような家庭を持つ当事者とその家族は、かえって偏見などにさらされる可能性をとても強く感じてしまうのです。他の要件に関しましても「二十歳以上であること」については、心の性で社会的性別が確立しているのなら何も親の同意さえあれば二十歳未満でも問題は、ないと考えます。むしろ早く戸籍上の性別を直す事で社会生活を円滑にいとなむ事が出来ると考えます。そして、性別適合手術を要件にされた場合、内臓疾患などで手術が受けることの出来ない当事者は、切り捨てられることとなりそれは、人道的立場から考えても問題があると思います。そもそもこの特例法は、要件を満たした当事者がすぐに性別の取り扱いの変更を受けられるものでなく家庭裁判所において裁判官の審判を受け、その審判の結果許可を頂けた者だけが、性別の取り扱いの変更を受けることが出来ます。故に、特別法には、要件を設けなくとも、ここの当事者を裁判官が判断すれば問題は起きないといえるのではないでしょうか。
 住民基本台帳カードにおいては、写真付きカードには、公的な証明証の機能が備わっておりますが顔写真の添付により当事者が使用する際カードに記載されている性別と写真の性別があわず当事者の心情としては、使用することが困難となり、使用したとしてもかえって混乱を招く恐れがあります。実際、使用の際の本人確認は、暗証番号により確認できるのですから、証明書としての機能だけを考えれば運転免許証のように性別の記載が無くても問題ないと考えております。
 健康保険も、性同一性障害の治療には殆どが適用外であり、当事者に重い負担を強いています。また、ホルモンの分泌異常を訴える半陰陽で且つ性同一性障害を有する当事者においては、保険証記載の性別に関する疾病に対し、保険適用の限界があり、医師から保険診療を拒否される事例も存在します。
 海外への渡航の際には、パスポートに記載の性別と社会生活上の性別が異なってしまい入出国時に本人確認を執拗に求められることもあり、更に渡航先の国によっては、宗教上の理由から、事実を知られると命さえ脅かされる可能性もあります。
 ゆえに、戸籍と異なる性で生活する性同一性障害を抱える人々に対する必要な法の制定と社会環境の整備と致しまして、陳情項目に列挙致しました次の項目に関しましては、早急に区議会より意見書の形で政府に検討をはたらきかけて頂くことと、足立区で実現可能な事項につきまして、早急に実現くださるよう宜しくお願い申し上げます。

【陳情項目】
1.性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の要件の見直しを求める政府への意見書の提出
2.住民基本台帳ネットワークからの性別欄の廃止と、性同一性障害を理由とした変更履歴の削除を求める政府への意見書の提出
3.住民基本台帳カードにおいて写真付きカードの記載情報の性別の廃止を求める政府への意見書の提出
4.性同一性障害の治療に対する健康保険適用範囲及び診断・治療が可能な医療機関の拡充など医療面での国の支援を求める政府への意見書の提出
5.求職時の性別記載の撤廃と不当解雇、職場差別等の禁止及び職場での支援を求める政府への意見書の提出
6.公文書の性別記載の再考と可能な限りの削除に関し各自治体条例の改正を求めると共に総務省などの関係省庁の省令・要領等の改正を求める政府への意見書の提出
7.性同一性障害を含む教育の充実及び教育現場での理解と若年層の当事者に対する支援を求める政府への意見書の提出
8.公務員や教育関係者、医療従事者等、性同一性障害に係る専門職の人々への研修と育成を求める政府への意見書の提出
9.パスポートの性別記載に関し当事者の海外渡航時の安全を確保する為に性別の変更を可能にする事を求める政府への意見書の提出
10.足立区で印鑑証明書等、性別欄の存在する証明書や申請書等からの不必要な性別欄の再考と可能な限りの性別欄の廃止
11.足立区で性別によらない選挙における本人確認方式の再考とその構築
12.足立区職員等の公務員及び教育関係者、医療従事者等への理解の促進
13.足立区立小・中学校における学校教育の一環としての取り上げと児童・生徒への理解の促進
 以上、陳情申し上げます。
 最後に、本陳情につきましては、先ず男女共同参画の問題としまして、広い意味での性差別撤廃につながり、個人情報漏洩の問題としましては、プライバシーへの配慮やその他性別以外にも関連する不必要な情報の排除等の意義があり、当事者以外の足立区民へのメリットも大いにあるものと考えております。更に、このような足立区の先進的取組みを、近隣の自治体にアピールする絶好の機会になるものと確信しております。

会議録

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